ベルギー版画工房

Galerie RECOLTE 企画
2007年5/7から5/23まで
ベルギー版画工房 Frans Masereel Centrum〜フランス遠征記

今回の遠征では、様々な感性を見事に揺さぶられ、とても多くの事を経験させていただきました。
その中で、そだきよしの作品はこれからどう変わっていくのか?これからの可能性に自分自身、素直に驚いたし、良い意味でも悪い意味でも、正面から作品と向かい合う事が出来ました。

ベルギーの版画工房では、Shelleyさんの制作を手伝いながら、僕は作品のアイデア等を常に考えていたのですが、他に、十数名の作家がそれぞれのプレス機を使って黙々と制作をし、工房閉館後は各部屋で制作していました。みんな作品を真剣に作る為に来ているので、自己紹介くらいはするものの、すぐに制作へ戻っていくのです。私は本当に版画が好きでやっているんだと言わんばかりに。

工房はGeelという駅から自転車で1時間余り、畑や農場が延々と続く先にあり、それはそれは美しい場所でした。
周辺には一日中のんびりと草を食べている馬さんが2頭いるだけなので、制作をするか、彼等と戯れるかという、贅沢な時を過ごせるので、あっという間に彼等と仲良くなり、呼ばずとも近寄ってくるようになった彼等と何度となくお話をしました。

制作中以外は、アントワープなどへも行き、人々や建物、その辺に落ちているゴミや虫に至るまで、作品のネタを探し、隅々まで観察をしてきました。
まだ一度も足を踏み入れてない場所に行くとなれば、冷静さを保ちつつも高揚していくのが分かります。こういう時の僕の飛耳長目はさらに抜群で、些細な事すらも余計に感じ取ってしまうのですが、距離をおいて見れば、きっと僕は人の体を借りた昆虫のような、とても奇妙な動きをしているに違いない。と思いながらも夢中で目をギラつかせていました。
楽しくて嬉しくて、身震いしつつ、美術館、博物館、教会等の作品にも釘付けとなりました。ふと我にかえった時には、もうフラフラなのですが、倒れても観てやる!と、気合いで観てきましたよ。
片隅にひっそりと飾られている作品、大きな展示室に厳重な警備、多くの客に囲まれた作品、どれも作家が命をかけて作りあげた物だと思うと、たとえ、今の自分に必要ないと思いつつも、通り過ぎるなんてできない。今、心に響いてこなくとも、自分がまだ遅れているんだと、好きな作品より遥かに多くの時間を費やしているんですよね。何故この作家は、この作品に全てをささげたのか?興味が尽きる事はないです。
そう、世界には素敵な作家がたくさんいて、生き残るのも僅か一握り。僕もその中の一人に入ると自信を持っているものの、まだまだ甘ちゃんやなー!と情けない気持ちやら、悔しい思いが込み上げてくるものです。
今回は特にそんな気持ちによくさせられました。しかし、それと同時に、自分はやっていけるなぁ!とも自然に思っていました。様々な美術館がある中で、いつかその場所に僕の作品が飾ってある風景が想像出来たからです。もちろん、そう簡単にいくわけがない事は重々承知ですが、気持ちは、さらに大きくなって帰ってきました。
たしかに大きな美術館、有名なギャラリーで飾られる事は凄い事ですが、飾られている作家は、ただ、自分のやるべき仕事をキッチリとこなしている。どんな作品であれ、恐ろしいくらい生真面目に。その思いが作品から伝わってくるのです。
負けられないだの、ビッグになりたいだの、作家をしている以上、貪欲に思うのは当然だけれど、自分の作品に対して嘘をついてしまったら終わりだと、また改めて感じました。

とにかく作品を制作し続け、それで、多くの人に喜びや幸せを与えられたらいい。
欲張りかもしれないけど、多くを知って、作品をもっと深みのあるものにしたいと思ってます。
今はただ勉強出来る事が心底幸せでなりません。
僕を支えてくれている全ての方に感謝します。 そだきよし

オンタイム遠征記
〜Galerie RECOLTEの海外遠征における日々〜